「親になれてよかった」と素直に子どもの誕生や成長を喜べる、当たり前を実現するために【完了インタビュー】
TANZAQ の出稿先プロジェクトとして選ばせていただいたNPO法人つなげるさま。
1年間のプロジェクト実施期間を満了した今、感じていることを伺いました。
NPO法人つなげる
双子・三つ子など多胎家庭が育児の身体的・精神的負担を和らげることで、自分らしく育児ができる社会を目指し活動している。匿名で自由にチャットできる「ふたごのへや」、多胎ママパパ限定のバーチャル子育てひろば「ふたごのひろば」、相談員に多胎育児について相談できる「つなげる相談室」を通じて、オンラインでの交流・相談をきっかけに、地域や社会を巻き込んだ家庭支援を行っている。
大野 祐一さん(NPO法人つなげる 理事)
孤立に陥りがちな多胎家庭を閉鎖した環境から開放するために
大森:孤独や孤立に陥りがちな多胎家庭同士の交流を通じて、自分らしい育児に励む環境づくりをサポートされているつなげるさんですが、多胎家庭をオンラインでつなげる着想を得た経緯を教えてください。
中原:私自身が多胎育児をしている経験が活動の原点になっています。双子育児は一人で産まれてきた長男の育児とは全く違い、常にどちらかが泣いていて二人共に同じように愛情を注ぎ続けることが難しく、自分に母親としての能力が乏しいため情操教育ができないと自分自身を責めていました。当時身近に境遇を理解してくれる方がおらず、死んでしまいたいと思ってしまったこともある経験から、同じ悩みを持つ多胎家庭を救いたいと活動を始めました。
まずは多胎家庭を閉鎖された環境から物理的に開放するため、幼児2人を乗せての運転が可能な3輪自転車を企画・販売する「株式会社ふたごじてんしゃ」を立ち上げました。しかし実際に多胎家庭の声を聞くと、彼らが求めているのは「ツール」ではなく「対話できる人」であることが分かり、多胎家庭をオンラインでつなげるNPO法人つなげるの活動が始まりました。
匿名のオープンチャット「ふたごのへや」から始まり、現在は動物アバターを着用しながらリアルタイムで音声のやりとりができる「ふたごひろば」も運用しています。
大森:多胎育児で子どもから目も手も離せないママさんにとって、そのような状況でも、そして少しの時間だけでもつながることができる音声コンテンツはとてもいいサービスですよね。
中原:育児をしているとパジャマのままバタバタしていたらいつのまにか夕方になってしまった、という話をよく伺います。メイク中や育児が落ち着いた夜に少しでも大人と喋る機会があることで、ママさんたちが社会とつながるきっかけにもなります。
また、多胎育児で悩むパパさんも悩みを話しづらい環境にあります。とある男性は、当初ミュートで他の参加者の話を聞くだけでしたが、そのうち自分も辛いと思うことは言ってもいいんだと気付き、ご自身のことを話してくださるようになりました。
大事にしているのは「ネガティブな言葉でも伝えられる場所があり、それを批判するのではなく励まし合える仲間がいること」です。SNSで発信してしまうと批判される可能性があるような内容でも話せる場所があることで、気持ちを楽にするお手伝いができると思っています。
大森:つなげるさんは当初オンラインサービスでしたが、そこからリアルで交流する「ふたごハウス」をオープンされた理由は何でしょうか?
中原:多胎に特化した場所として誰でもいつでも訪ねて来られる「ふたごハウス」は、「本当に必要な多胎支援」にはどのような場所や設備、制度が必要かを明らかにして、発信していくための実証実験も兼ねて開設しました。
多胎家庭で問題として挙げられている沐浴、離乳食の対応、ママさんの寝不足などのサポートに適している制度は何か、既にある制度の中で改善できるポイントを明らかにするため、実際の住宅での暮らしをイメージした空間にしています。
スポンサーやグッズとして反響があったYogibo
大森:TANZAQに参画していただいたきっかけは何でしょうか?
大野:活動資金調達の方法として、画期的な仕組みだと思い応募しました。今まで助成金に頼ることが多かったのですが、採択された助成事業に関する広報活動しか財源として認められなかった一方で、比較的自分たちで自由に広告計画を設計でき、承認されれば広告出稿をいただくことが可能なTANZAQプロジェクトに魅力を感じました。
大森:TANZAQに参加しYogiboがスポンサーとなったことで、何か反響はありましたか?
中原:多胎家庭の方はもちろん、それ以外の方からの反響もありました。ふたごひろばのオープンスペースでYogiboソファのイラストとYogiboSOCIAL GOODクーポンについて掲示していると、参加者の方からそれに関する質問をいただくことが多かったです。TANZAQプロジェクトについて説明すると、多胎育児の状況を知り応援してくれている企業があることを喜んでくれました。
大野:オフラインでのイベントでYogiboソファを設置したことも大きな成功だったと思っています。今までお子さん連れのパパさんママさんと話す時間を確保することが課題だったのですが、Yogiboを置くことで私たちが親御さんと話している間、子どもたちが飽きずに遊んでくれて大変有り難かったです。
TANZAQを通じて感じた広報の重要性やWEBメディアの可能性
大森:TANZAQでの広告活動を通じて、気づきや手応えはありましたか?
野:TANZAQに参画している他の団体の活動を拝見すると、つなげるも広報担当を置くなど広報戦略を練る必要があると感じました。現状の人員ではイベント対応しながらのリアルタイムなSNS発信が難しく、そもそも写真を撮ることさえ忘れてしまうことが多々あります。
大森:社会課題×広報というのは、改めて重要なテーマです。広報担当として、多胎家庭や育児に興味のある学生などをアルバイトやインターンシップ生として募集するのも一つの方法ですね。SNS発信は若い世代の方が得意な場合も多いですし、つなげるさんの活動を新たな層に認知してもらうきっかけにもなると思います。
TANZAQへの参加を通じて、団体として進化を感じたことはありますか?
大野:YogiboスポンサーのもとWEBメディア「多胎チャンネル」を作れたことは大きな資産となりました。個人の主観に偏らず、全ての多胎家庭に安心して読んでいただけるWEBメディアを作ることができたため、今回のTANZAQプロジェクトが終了した後も運営を続けていこうと考えています。
また、実際に多胎チャンネルを運営してWEBメディアは企業とタイアップしやすいと気付きました。今後は企業と連携したPR記事の掲載など、周囲を巻き込みながら運営していきたいです。
大森:TANZAQプロジェクトとして終了した後も残るものがあるのは嬉しいですね。多胎チャンネルの運営が続いていくことにより、つなげるさんの活動がさらに広がっていけば幸いです。
今後の活動について
大森:多胎チャンネルの他には、今後どのような活動をされる予定ですか。
大野:つなげるは、日本最大のオンライン多胎コミュニティとなりました。ただ、毎年8,000の多胎家庭が生まれているといわれているなか、現在の5,000人ほどの会員では全ての多胎家庭に届いているとはいえません。
そこで、まずはオンライン・オフラインどちらでも多胎家庭が必要な情報にアクセスできるようにするため、地域の自治体や子育て支援団体との連携を通じて情報発信を続けていきます。
・中原:近年、家庭環境の複雑化により、個別支援として弁護士やソーシャルワーカー、児童相談所など専門家に繋ぐ必要があるニーズが高まっています。そのため、つなげるが多胎家庭を適切な専門家に繋ぐコーディネーター的な役割を果たす「つなげる相談室」という新しいサービスの準備も進めているところです。
家庭によって事情は様々ですが、引き続きモノの支援に留まらず、パパさんママさんが「親になれてよかった」と素直に子どもの誕生や成長を喜べる、そんな当たり前を実現できるよう活動を続けます。
大森:つなげるさんの活動の原点ですね。活動を広げていくにあたり、今後とも多胎家庭が抱える課題だけではなく、ぜひ共に実現したい未来を発信し続けていただきたいなと思います。
つなげるさんの多胎家庭のストレスをなくす活動は、多胎に限らず、すべての子育て家庭のストレスをなくすことにも通じると感じています。
今回はインタビューにご協力いただき、ありがとうございました!