障がい者雇用を通して企業が地域とつながる新たな一歩を【完了インタビュー】
TANZAQ の出稿先プロジェクトとして選ばせていただいたチュラキューブさま。
1年間のプロジェクト実施期間を満了した今、感じていることを伺いました。
チュラキューブ
大阪府内の企業の障がい者雇用の未達成数が約8,000人という課題に対して、障がい者が社会課題解決の担い手となる大阪発のビジネスモデル「ユニリク(ユニバーサルリクルーティング)」という新しい雇用の形を推進している。
複数の社会課題を結びつけることで、それぞれの課題の解決を目指す
大森:チュラキューブさんの活動内容について教えてください。
中川:障がい者の雇用を推進するために必要なコーディネートを行う「ユニリク」と、障がい者雇用について情報を発信する「Reスタ部」の2つをメインに活動しています。これら以外にも、商店街や農業の活性化など、地域活性化を中心に様々な社会課題を結びつけながらそれぞれの課題の解決を目指しています。
大森:個別の社会課題を解決しようとするのではなく、それぞれの課題をつなげて新しい視点で解決を目指す
というのは素敵な活動ですよね。今回TANZAQのプロジェクトとして行なった障がい者福祉にかかわる活動の根幹にはどのような想いがあるのでしょうか?
中川:私は過去に演劇をしていた経験があるのですが、経済的な壁と対峙したときに夢を持ち続けることが難しく、諦めざるを得ませんでした。障がい者にも同様の課題があり、特に日本では障がい者が経済的な不安なく夢を持ち続けるハードルは高いと痛感しています。
実際、社会における障がいへの理解が浅く、人材育成を諦められてしまったり、職場で差別されてしまうなど、悲しい事例を聞いています。そこで、社会において障がい者雇用に対する理解が促進されるよう、ユニリクやReスタ部で実証実験を繰り返しながら、新しい障がい者雇用のモデルづくりに励んでいます。
障がい者が地域の課題解決のヒーローとなる「ユニリク」
中川:障がい者雇用に必要なコーディネートを行うユニリクは、某ビジネスホテルチェーンの人事担当者の方からいただいた相談がきっかけで着想を得ました。その会社では、国が定める数の障がい者を雇いたい気持ちがある一方で、定められた数の障がい者を雇用しながら十分なフォローを行うのが難しく、障がい者の雇用を期に現場でトラブルが起きてしまったこともあったそうです。
雇用主である企業と従業員となる障がい者からの声、どちらも叶えるような雇用の形として「企業が雇用主となりつつも、従業員がチュラキューブの運営する施設に出向する仕組み」を考えました。これにより、企業は障がい者を雇用することへのハードルが下がり、従業員はチュラキューブが運営する施設で丁寧にフォローすることができるようになります。
ユニリクの出向先の1つに「大阪府杉本町みんな食堂」があります。この食堂は、「障がい者雇用」と「団地の過疎化」や「高齢化社会」といった課題を結びつけ解決することを目指してオープンしました。出向してきた障がい者が地域の課題解決のヒーローとなり、雇用主である企業も巻き込みながら共に課題解決を目指せることがユニリクの醍醐味だと思っています。
大森:ユニリクを運営するなかで課題だと感じたことはありますか?
中川:有り難いことに、ユニリクは多くの企業に利用していただいています。チュラキューブによるフォローも功を奏し、従業員の定着率の高さから障がい者就労の好事例としてメディアでも取り上げられ、新しい雇用の形として注目されています。
しかし、多様な働き方への理解があまり浸透していないことが課題であると感じています。具体的には、「出向」という形が本来あるべき雇用形態ではないと言われることがあります。今後も少しずつ事例を増やし、新しい雇用の形として進化させながら、その価値観から変えていきたいと考えています。
TANZAQが認知度向上のフックに
大森:TANZAQのプロジェクト期間中にSNSでショート動画を投稿したり、Reスタ部で記事を発信したりと、様々な新しい取り組みをされましたが、どのような反響がありましたか?
中川:YouTubeなど各種SNSでアップしていたショート動画は、「活動紹介の内容が分かりやすい」と反響がありました。私自身、台本なしで喋ることが得意なので、強みを活かせるものとして今後も投稿を継続していきたいと思ってます。
大森:SNSでの積極的な情報発信は、確実に知名度の向上につながっていますよね。
また、Yogiboにも、ユニリクを活用してみんな食堂に出向し、活躍してくれている従業員がいて、彼らはYogiboのロゴ入りエプロンを着て働いています。まさにその様子がメディアにも取り上げられましたが、Yogiboがスポンサーとなったことによる変化はありましたか?
中川:Yogiboのロゴ入りエプロンが、来店されるお客様と従業員のコミュニケーションのきっかけとなっていました。その流れでYogiboからの出向社員であることに言及されるので、結果としてエプロンのおかげで視覚的にもユニリクの仕組みが伝わりやすくなっていると感じています。
また、今回TANZAQに参加してYogiboさんと協働しているプロジェクトだと銘打てたことが、ユニリクの認知度向上のフックとなり、いろいろな方に興味を持ってもらえるきっかけにもなったと感じています。おかげさまで、大阪商用信用金庫様からのソーシャルビジネス賞を受賞したり、大阪ガスネットワーク様の情報誌「CEL」で6ページにも及ぶ対談記事を掲載いただくことができました。
大森:Yogiboでの導入を通して、ユニリクに興味を持ってもらえるきっかけを生み出せているのは嬉しいですね。
目指す未来・今後について
大森:チュラキューブさんとして今後どのような活動をされる予定ですか?
中川:ユニリクは、これまで14年間の挑戦を経て、後継者不足という課題と絡めた雇用に関しては成果を出すことができました。今後は障がい者が社会でハッピーに働けるようにするため、特に雇用後の人材育成に関して社会への提言できるよう、論文としてまとめることを考えています。
また最近は、大学生や社会人の方から、仕事と並行して社会課題の解決に貢献できる方法を教えてほしいと相談をいただくことがあります。障がい者福祉の分野に留まらず、私も常に「『何かに貢献したい』と考える若者を応援するために何ができるか」を考えています。近年、他者とのつながりが薄くなり、おせっかいな人が少ない時代になっています。そのため、私自身がチュラキューブの活動を通じて多くの人や社会課題と関わり続けていくことに意味があると信じています。
大森:チュラキューブさんでは、ユニリクをはじめ様々な活動をされていますが、それぞれが相互に影響しあい理想の未来の実現につながっているのだと感じました。
今日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございました!